命から食材へ、そして、受け継ぐ

かたや市場で購入したお肉で作る通常のアワイチ・バーガー。かたや今回の猪から頂いたお肉で作ったイノシシバーガー(BOA Burger)。
出来上がった2ツのバーガーに、味の違いはあるとはいえ客観的には単なる食材としてのバーガーであろう。

手前がBOAバーガー。奥がアワイチバーガー

しかし作り手のボクからはイノシシバーガーの圧倒的な存在感を感じる。
うっとおしいだろうが友人たちがイノシシバーガーを試食する、彼らの一挙手一投足が気になって仕方がない。

さて、イノシシの解体だが、皮を剥ぐ作業と同時並行で4本の脚も身体から外す様に解体していく。
スイムでも意識する様に身体本体から肩甲骨をはがす様に先ず筋膜をカット、細かな筋をカットして大きな肩甲骨と身体との間にナイフを滑らせる様に差し入れ剥がしていく。 スイムで指導を受けている肩周りの柔軟性を実際にメカニズムを検証しながら解体していくのは興味深い。
足先は上手くいけばナイフでカットできるが軟骨にナイフが入らなければ強引にノコで解体していく。

内臓を背中側の筋膜から剥がしだし、気管支をナイフとノコギリで切り、膀胱と大腸を傷つけない様、ズルズルと臓物を桶に入れる。本来ならレバーやハツ(心臓)はご馳走なのだがまだ初心者なので内臓一切は廃棄。内臓が無くなると背骨から繋がる腸腰筋(フィレ)が露わになる。

四足歩行なので大きくはならないらしいがそれでもボクの上腕二頭筋程ある。 腸腰筋をしっかり使える様に、背骨との繋がりをしっかり観察し内臓との関与や筋膜との連携を観察しながら解体を進める。

皮を剥がし、内臓、脚4本、広背筋など大きな筋肉を外していくと魚の様な駆体が残る。 まだまだ細かな肉を摂取可能だろうが頂いた肉を早く処理しなければ外気温や乾燥、衛生面で心配なのでこれで解体はやめ、残骸は畑に穴をユンボで深くほり、埋葬した。

後日、埋葬された畑に平蔵と献花に訪れた。
命がここで終わったコトを花が静かに訴えかける。
そして己が生きているコトを振り返り感謝する。
この気持ちを食材・料理に対峙した際に忘れないようにしなければならない。 まして料理人の片隅に列しているなら、なおさらに。